妻との別れ

 彼女は余命半年と宣言されながらも懸命に病魔と闘い3年間生きぬきました。
 彼女は最小限の周囲の人にだけ病気を伝え、努めて周りに元気を振りまいていました。
 彼女は3年間で2回だけ、死というものの恐怖からくる不安や弱気な自分を見せました。
 彼女は今まで彼女の人生におけるその軌跡を、その人生が終結する時期に見事に証明して
 見せました。

 1963年2月14日、彼女は誕生しました。
 2006年6月、43歳の時、病院の検査で癌が発見された時点で、既に肺から脳、腰椎へと転移している手術が出来ないステージⅣ、末期がんで主治医からは余命半年、もっても1年は絶対持たないという告知を受けました。しかし、彼女は自分が癌であることを周囲に知られる事で、頑張れなくなるという理由から、親にでさえ数ヶ月後に告知したぐらいでした。そんな頑張りは、普通であれば迫り来る死への恐怖から、泣いたり叫んだりするはずですが、この3年間でたった2回だけ弱気な自分を見せたに過ぎませんでした。1度目は告知された時、2度目は告知から1年を過ぎた頃でした。
 亡くなる2ヶ月ほど前からは、ほぼ24時間の看護を必要としてきました。看病といえばほぼ身内が行い、本人が亡くなる頃には、心身ともに疲れ果てるようなことが多いものですが、今まで彼女がお付き合いしてきた彼女の友人、親戚などが彼女を一人にさせる時間がないようにと、昼夜を問わず交代で看病をしてくれました。そんな彼女や周囲の頑張りでも、2009年5月26日午前6時54分、とうとう終結を迎え46歳にて永遠の眠りにつきました。
 彼女はもとより、彼女を心底思ってお世話頂いた周囲の人々に、本当に心から感謝申し上げます・・・。