竹下貴之さん

 先日、以前のコラムでも登場した、竹下貴之さんと5年ぶりに京都で会いました。以前は名前を伏せましたが、今回は彼の今後のためにも実名です。彼は東京大学大学院を主席で卒業、旧科学技術省へはその年に各省庁合わせて10名という、いわゆるキャリアという超エリートで入庁しておきながらその肩書きを捨てて、自分の研究に没頭することに専念した人物です。
 その彼との出会いは、私が東京で勤務していた頃、私の販売現場にアルバイトで来た事がきっかけでした。そんな彼が旧科学技術庁に入庁してからも、何度も居酒屋で将来の日本のエネルギーについて語りました。そんなある日、巣鴨の駅前の居酒屋で、彼の仕事に対する悩みの相談に乗っていた際、これは彼曰くですが、私が言った言葉が彼のその後の生き方を決めたそうです。それは踊る大捜査線でいかりや長介が「正しい事がしたければ、偉くなれ」と言った言葉そのままです。それはその組織の中で偉くなって正しい事をするということは勿論の事、それが過度なストレスになるなら、また違う方向や場所で認められるようになって最終的に同じように実現できればいいんじゃない、と言ったことでした。
 彼は本当に次の日にキャリアを外れる要望を上司に行い、一般的には窓際といわれる職場環境で自由に研究を行うことを決心しました。そしてその研究を更に極める為に東京大学大学院へ行き、更に今、立命館大学で本当に自由に研究できる環境が整ったようです。そしてようやくその方面からある程度認められる存在になったと、その成果である全部英文の論文や、論文が掲載されているその分野では超一流の有名雑誌や自分が載っている一般誌を袋に詰めて、嬉しそうに渡してくれました。
 そして私は彼と約束をしました。今度はノーベル賞やなと。彼は本心で「そのつもりです」と言い切りました・・・。