老後の不安

 ある日、一人で行った馴染みのバーのカウンターで、たまたま隣同士になった、頭が少し薄くなってきている中年男性と話をしていました。その方は何か事業をされているらしく、マスターから「社長」と呼ばれていましたので、私もその方の名前は聞かず「社長」と呼んでいました。
 その「社長」とお話をしている中で、少し興味を引いた話がありました。それは、その「社長」の知人の方が、身寄りのない独り者で、つい先日なくなられたのですが、残されたお金や財産が結構あったらしく、それらは国庫へ納められるというお話でした。
 その「社長」もつい先日離婚されたばかりのようで本人曰く、「訳のわからん遠い親戚に、転がり込むような形で相続されるくらいなら、国にあげたほうがましやわ。でもそれよりもっとええのは、老後の生活を保障してくれるんやったら、全財産を国にあげてもええわ。」ということでした。それを聞いて私は、確かにそれは一理あると思いました。
 人は老後の生活がどうなるのか、特に子供や頼れる人がいない場合、本当に頼れるのは「お金」になってしまいます。それは、「あと何年何ヶ月私は生きるので、生活費がこれくらいで、娯楽費がこれくらいで、医療費がこれくらいで、それを足して○○万円あれば大丈夫。」ときっちり計算できるようであれば、それ以上のお金はそんなに必要が無くなります。しかし、現実にはあと何年生きられるかや、どんな病気になるかもしれない状況では、いくらお金があったとしても不安になるのは当然です。だから死んでまでお金が持っていけない事は分かっていても、出来るだけ支出を減らし、お金を増やそうとする為に、終期には沢山お金や資産が残ってしまう事になってしまいます。
 だから、先述のようなことを言うんだなと思いながら、簡保や生保のHPでそんな商品がないかなあと見てみましたが、一つの年金の受取額だけで満足な額が受け取れるものは、ざっと見た限りではありませんでした。(詳しく調べればあるのかも知れませんが)それは、年金を「商売」としてみたら成り立たないのであって、もし、成り立つならやっているでしょう。
 そう考えますと、このような事はやはり国や自治体が行うべきものであると言えます。しかし、以前に新聞で見てどういう名称か忘れたので調べられなかったのですが、東京都では自分の家を自治体へ所有権移転し、その後、年金として決まった額が受け取れ、相続が発生すれば売却されるという制度があったように思うのですが、そういった制度をどんどん増やしていけば、老後の不安も少しは解消されるでしょうに・・・。