相田みつを

 先日、就寝前に TVのチャンネルをカチカチと変えていましたら、何となく「やしきたかじん」さんの番組でチャンネルがとまり、その番組を見ていました。その日のゲストは、タレントの山田まりあさんと、プロレスラーであり国会議員の大仁田厚さん、それにAV 製作会社社長の高橋がなりさんが出演されていました。その中で、それぞれのゲストの方が、自分の話したい題材を出し、それについて「たかじん」さんとともに面白おかしくトークしていました。山田まりあさんや大仁田さんは自分が売れる前の苦労話や、がなりさんは、これまで会社を大きくする前の話などそれぞれに興味の湧く話題でした。中でも、大仁田さんの国会議員の話題で「歴代の総理経験者はすべて“総理”と呼ばなければならないんですよ」と言った言葉には、人間の弱さを改めて感じさせられました。
 人は、「肩書き」や「社会的地位」がない時期には、それこそ自分の実力で何でも勝負していかなければならないもので、先ほどの「総理」になられた方々も、そういう時期はあったと思います。ただ、一旦、権力を手に入れた人間は、そういった権力を失うことは、さも自分の実力を失うように思い、死守しようと努力をします。その努力は、当然すべき努力であると思いますし、もっと言えば更に上を目指して更なる努力をすべきだと思います。しかし人間の世界では、もうその地位に相応しいと思えない努力の足りない人間が、何とかしてその地位を守ろうと醜い「あがき」を垣間見ることもしばしばあります。
以前私が勤め人であった頃、一番多い時期には部下も50~60名程になり、それなりに順調に仕事をこなしていました。しかしある時期、仕事に行き詰まりひとり悩んでいた時に、部下から「大薮さん、とにかくだまされたと思ってこの本読んでみてください」と一冊の相田みつを先生の「にんげんだもの」を手渡されました。深夜帰宅して、酒を飲んで暫くしてからその本を開けました。毛筆で書かれたその大きな文字は、「どんな状況でも自分は完璧に仕事をこなしているんだぞ」という硬い鎧を着ていた私の心の奥底に突き刺さりました。
 「弱きもの人間 欲ふかきものにんげん 偽り多きものにんげん そして人間のわたし」
 「ぐちをこぼしたっていいがな 弱音を吐いたっていいがな 人間だもの たまには涙をみせたっていいがな 生きているんだもの」
 涙が止まりませんでした。そして楽になりました・・・。