尾道

 先日、妻と休みにどこ行こうかという話の中で、以前このコラムに書かせていただいた尾道の「うどん 奥山」さんに再度行ってみたいということになり、休みが取れた日に行ってきました。その日は昼過ぎくらいに妻と犬2匹を車に乗せて走り出し、夕刻には尾道に着いたのでそのままお店に伺いました。夕刻の早い時間にかかわらず、以前伺ったときとは全く違う状況で、この春卒業したばかりで大阪から帰郷した女子大生の4~5名組から、地元で勤めておられる方までカウンター席はほぼ一杯の状態でした。そんな中、お客さんが入れ替わり立ち代り来るたびに、何名かが何も言わずカウンターをくぐり、向こう側に立ってお客さん同士が話をするという、未だかつて見たことの無い光景が広がっていました。私も馴染みの店をよく作るのですが、ここまで自由にカウンターの中へいろんな人が入って、また勝手に冷蔵庫を開けて飲み物を飲んでいる姿は見たことが無く、また、少し酔ったお客さんが入ってきたとき、「ウーロン茶!」と言って一杯飲んで、30分位いらっしゃいましたが、お勘定は「200円」と、一度ならず二度までもこのお店には相当驚かされました。そんなこの店に来られるお客さんは皆さん本当に気さくな方で、初めてお会いする私たちにも積極的に話し掛けてきて頂き、特に私から見てカウンターの斜め前に立っていた若者2人と横に座っていた若者とは、こんな親父と同世代の私達でも面白おかしくお話をさせていただき、本当に楽しい時間を過ごすことが出来ました。感謝。
 このお店はジャンル分けしますと「居酒屋」さんですが、以前は「うどん」屋さんだったらしく、カウンターの向こうには大きな釜が残っています。その釜の中に恐らく板を敷いて、その上にお酒のビンを並べていたり、冷蔵庫は家庭用の冷蔵庫を使っていたり、コンロも普通の家庭用を使っていたりして、本当になんとも言えない良い「味」を出してくれています。こんなお店が住んでいるところの近くにあれば、私も毎日でも行っていることでしょう。
結局、私たちはこのお店を出て、仮眠を取ってからすぐ家路に着きました。ですから、そのお店に行くだけの為に片道4時間400kmかけて行った事になるのですが、料理ではなく(大変失礼ですが)、自分たちにとって非常に心が満たされるお店がまた一つ増えたことが何よりの喜びであり、それは、一食何万円もする豪華なお店に行くより、また有名なお店に長い行列を作って食するより、そういうことが出来るお店があることが最高の贅沢だと思えました・・・。