有言実行

 先日の事です。今まで私は、何かをやり遂げられた時や、逆にやり遂げられなかった時に、「よくやった」という言葉を言えるのは、その努力などを行った本人ではなく、周囲の人達が言う言葉だと思っていました。いくら本人が、寝る暇を惜しんでまで努力したと思っていても、それは自己評価であり、且つ自己基準でしかなく、周囲の人たちがそれを認めなければ「よくやった」事にはならないだろうとも思っていました。逆の例として、もっと極端な言い方をすれば、本人が「もう少し頑張ったほうが良かったな」と思っていても、周囲の人たちが「よくやった」と言えば、本人としてはそんなに努力したつもりは無くても「よくやった」事になるんだろうとも思っていました。
 そんな中、私自身の仕事とは別の所で行っている活動の中で、周囲の人たちから「よくやっている」という言葉をかけられて、私自身単純な生物なものですから、そういう風に言われると簡単に勘違いしてしまい、自分でも気づかない内に気が緩んでいたようでした。世の中うまく出来ているもので、それがある節目に今までの気の緩みの代償が一気に噴き出して、周りの方に迷惑をかけてしまいました。
 その日は非常に落ち込み、そして自分自身の弱さを痛感しました。それは、自分自身が物事を完全に、また間違いなくこなせる能力があると思っていたわけではなく、自分自身がどれだけやれるだけの事をやったか、という自問で「やってなかった」と答えが出たからでした。
 この日はその後、以前勤めていた会社の同僚二人が、出張で大阪へ来るというので一年ぶりに会いました。仲間と一緒に一つの目標に向かって我武者羅に仕事をしていた頃の話で花が咲き、そこで私がその会社にいる時に、信条としていた言葉が話題になりました。それは「有言実行」です。四文字熟語で「不言実行」というものがありますが、私はそれが出来る人は、強い意志を持っている人だと思います。自分のような弱い人間は、周りの人に「あれをやってみせる」とか「こうしてみせる」とか言いふらす事によって自分を追い込まないと、中々達成出来ないのがわかっているので、それを信条としていました。サボりたい自分がいます。楽なほうに流れていく自分がいます。その自分をいかに動かす事が出来るか、そんな自分といかにうまく付き合っていくか、そんな事を考えると他人を動かす事より、自分自身を動かすことのほうが非常に難しいことだと思っていたからでした。
 再度その時の心を思い出し、「さあ、あしたからも頑張るぞー」とこれをお読みいただいている皆様へ「有言実行」を行いたいと思います。