ある夏の七夕祭りに参加した、車椅子に乗ったオムツが外せない17歳の女の子とのエピソードです。 その女の子は、お母さんに車を押してもらい会場に来られました。先生はその女の子に声をかけられました。「**ちゃんも皆と同じようにこの短冊に願い事を書いて吊るそうね」すると女の子は、「書くことは無い」と即座に返答しました。
先生は「そう言わずに、皆もできもしない事でも書いているんだから、先生が書いてあげるから言ってごらん」と言いましたが、女の子は無いものは無いの一点張りでした。そんなやり取りが2~3度続いた後女の子は、目を閉じてじっと考え込みました。そして5分が経過し、ようやく目を開いた女の子は、それでも「やっぱり無い」と言いました。お母さんはそれを聞き、女の子を叱咤しました。 その後先生は、「皆がいるところへ行こう」と女の子の車椅子を押し始めました。しばらくすると女の子は、動かしにくい指を必死に動かし、車椅子を押す先生の手の甲に、合図をしました。先生は押すのを止め、さっと女の子の前にしゃがみこみ「なに?」と聞きました。女の子は「先生、さっき何でも構わないと言ったね。本当に何でもいい?」「いいよ」「本当に何でも怒らない」「怒らないよ」「本当だね」「本当だよ」というやり取りの後、先生は短冊に女の子のお願いを書きました。
そのお願いは、先生には到底想像もできなかったお願いでした。
「お母さんより1日早く死なせて下さい」
17歳のオムツが外せない女の子は考えたのでしょう。母の死後、自分にかかりきりになっているお母さんを、1日でも解放させてあげたい事や、母の死後に自分の身の回りの世話を誰がやってくれるのか等を・・・・。 短冊をつけた後、お母さんが先生のところへ近づき聞きました。「先生あの子は何をお願いしたのですか?」先生は答えずに、短冊を見るように言いました。お母さんはその短冊を長い間じっと見つめ、そして先生の下へ帰ってきました。 そして言いました。「先生、私もお願い事を書いていただいてもいいですか?」
「娘より1日長生きさせてください」