ティウロン村の笑顔を守りたい

 7月の初めにマレーシア、ボルネオ島のサバ州にあるティウロンという人口100人ほどの村にホームステイに行きました。このツアーは以前このコラムでも紹介したシンガーソングエロランナー杉浦貴之さんの奥さんの亜紗比さんが企画したもので、その目的は自然に委ねられた生活を村人と共に数日間生活することにより、素の人間同士としての心の交流をすること、二つ目は80年代から日本に向けて大量に輸出された木材の伐採地を、現地の緑の復活と同時に、現地の職の創生のための植林を行うこと、でした。
 正直なところ、シャワーもなく、桶に貯めた茶色い雨水で体や頭を洗い、同じ場所にあるトイレには紙もなく、左手で拭いてその雨水で手を洗う、などと聞いていましたが、現地へ行ってみるとホストファミリーも理解していてくれて、我々の生活スタイルは快く許可してくれましたし、食事も想像を逆に覆すほど日本人の味覚に合っていました。そんなティウロン村での生活は、熱帯雨林の地域では、当たり前なのかもしれませんが、かなりゆっくりとしていまして、朝早く起床し午前中に仕事をし、午後の暑い時間帯には、家の中や高床の下で雑談する、といったある意味優雅な生活でした。
 ここの人達は、日本の通貨で言うと月2~3万円程度の収入です。しかし、これほどまでに時間や体や心にゆとりのある生活を、どれだけの日本人が送っているのでしょうか。私を含め殆どの方は、時間や仕事に追われ生活しています。私達の生活は何かが必要になるので、一生懸命に働いてそれを得ます。しかし逆にいえば、食べるものがありさえして、何かを求めたり何も必要でなければ、こんな生活が送れるのです。杉浦さんがブログで言っていました。ここは発展途上国だけれども、日本は発展過剰国だと。確かにそうかも知れません。
 別れの朝、村人全員で一列に並び、私達10名を見送ってくれました。子供たちは、車が見えなくなるまで走って追いかけてきます。そんな中、涙を流しながら私の頭の中には、あのウ***滞在記のテーマがずっと流れていました・・・。